ICOH3日目

今日は、ブラジルの友人Eduardo Algranti先生がKeynote Speechというので、あまり聞かない大会場のセッションで始まった。彼はWHOのコラボレーションセンターであるFundacentroという産業医学研究所の所長だが、リスクコミュニケーションの話でチャップリンの映画なども使って聴衆の興味をうまく捕らえての名講演だった。うちの大学院生のNgatuさんも本日は国際会議初発表で、大変緊張していたらしいが、用意していたフライヤーが殆どなくなるほど、聞きに来てもらえて大満足だった。
午後はアスベストのセッションに参加したが、クリソタイルの発がん性の点で発がん性を否定するToxicologistの口演もあり、見ているには面白い議論になった。日本からも帝京大の矢野栄二先生が日本の産衛でも時々経過を報告されていた中国の白石綿の紡績工場の疫学調査を報告されていて、中々良い発表だったが、件のtoxicologistの反論もあるなど、結構大変だった。ここでも前述のEduarudoがブラジルでの実例と疫学データを示して、「メカニズムとしてのアンフィボールとクリソタイルの比較は興味深いけれども、公衆衛生の見地からはinrelevantだ」と喝破して大喝采を浴びた。毒性学者としてはメカニズムがすべてという考え方なのかもしれないけれども、科学というのは全能なようでそうではない。様々な仮定の上に成り立った実験を行った結果から真理を類推しているに過ぎないことが多い。それに対して、人口動態の死亡情報を基にした疫学情報、特に記述疫学は、起こった事実をそのまま示している。事実に勝るものはないということか。