職場巡視

今日は月一回の産業医活動の日。大学院生などがたくさんいてくれれば、こういう実務はお願いしたいところですが、教授自ら産業医活動を行っています。といっても現場に出て行くというのは、いろいろな発見があります。産業医講習会などでは、よく病棟の回診と同じですよというのですが、月に一回で、しかもいろいろな事情で行く度に違う出張所を見るというスタイルでは、なかなか把握ができません。
 福井で産業医をさせていただいていた明治ナショナル工業では、月に2回出勤を求められていましたが、それでも3年ぐらいはこの事業場で何をどうやって作っているのかが理解できなかったものです。この工場は店舗や企業など向けの照明器具を製造している会社で、鉄板の切断・折り曲げ・溶接などの金属加工、塗装工程、組み立て工程に分かれているだけの比較的分かりやすい工場だったのですが、企業特有の職制のシステムや重要な案件の進め方などいろいろと分からないことが多く、健康管理室で看護師さん相手に産業保健とはという話を滔滔としていたように思います。できそうなことは何でもやってみましたので、小さな工場でしたが、日本一進んだ産業保健をしているつもりでやっていました。丁度、福井を去る直前に「産業保健21」というこの分野の人だけが知っているマイナーな雑誌(会社の健康管理室には置いてあると思います)の第50号に取り上げられましたので、関心のある方は読んで見てください。
 そこで心がけていたことは、産業医出勤日にはたとえ10分しか時間が無くても巡視をするということです。安全パトロールなどで衛生管理者や安全管理者が巡視をした報告もあるので、それも網羅されてしまう場合もありますが、それでも懲りずに極力毎回巡視をしました。そうすることで、従業員の方に顔も覚えてもらえたのではないかと思います。顔が見えないと、いかに名医であるといっても頼って貰えないものです。
 職場巡視の最も重要なところは、臨床医が視診、触診、聴打診などの理学所見で症状を診るように、「職場」を診断するために、総合的な所見を取っているのだと思います。作業環境測定のようなデータも勿論重要ですが、それは臨床医が用いる血液データなどと似ていると思います。総合的な症状を把握していなければ、科学的な測定結果も意味をなさないことになるでしょう。
 ちょっと、徒然に書いてみました。