神田まつや

班会議の前に神田の中西久先生を訪ね、久しぶりにまつやでそばを食った。東京の蕎麦屋の中では一番気に入っているのだが、あんまり「うまい!」と言う感じが広がってこなかった。シンプルに盛り蕎麦にした方がよかったのかも。飽食が舌の能力を抑えてしまうのかもしれない。尤も、福井の手打ち蕎麦が自分の中でスタンダードになってしまって、蕎麦の香りが広がってこないと点数が低くなってしまうからかも。
中西先生も内科医から産業医学に転職した口だが、労働衛生機関のクリニック所長として獅子奮迅の働きをしている。周辺でも常勤の産業医の募集が非常に多いのだそうだ。私のところにも知らない企業から電話がかかってくるらしい(わたしがいないときに秘書が出ているので詳細はわからないが...)。この全般的な医師不足の状態で、地域医療を放棄して産業医ばかりが充足するようだと本末転倒だが、団塊の世代の引退の時期が来ているからか、人材不足を憂う声は大きい。ただ、産業医にしても知識さえあればどんな人でもよいということではない。日本医師会認定産業医日本産業衛生学会専門医や労働衛生コンサルタントはひとつのミニマルスタンダードだが、臨床医学の能力というのも基盤になければいけないと思う。臨床研修を終えたというだけで、産業医学に十分なのかはいろいろ考え方もあるだろうが、不安な気がする。大学病院で職業病外来などをやっているところは皆無と言ってよく、地域の病院でモーティベーションの高い先生が独自にやっているところがあるに過ぎない。また、労働衛生機関は産業医学の前線基地のひとつだが、検診の顧客の事業場の産業医をしていても中々厳しい指摘が出来ない現実があるとも聞く。大学の衛生学なんかで、産業医学外来やったらいいんじゃないかと思うが、医師の替えがないと一人では踏み切れないという感じだ。