御社のトップがだダメな理由

例によって飛行機での移動中は移動書斎となるが、今日のお供は「御社のトップがダメな理由」。この著者藤本氏の前著「御社の営業がダメな理由」も読んだが、なかなかよかったので新刊(2008年3月刊らしい)はどんな本かと関心を持っていたところ、空港の本屋で見つけ購入した。安倍前首相の例に出し、横文字の制度を吟味もせずに取り入れるトップの無節操振りを批判した本だ。表面のみの能力主義が従来の年功序列の上での実力者の抜擢に劣っている面がいろいろと述べられている。15年ほど前からの成果主義の導入によって起こってきた様々な弊害が日本式経営の利点を再認識させることになっているのか。民主主義的な多数決の論理で選出されたトップは、多数はの顔色を伺う選択しかしえず、強力なリーダーシップを発揮し得ないとし、リーダー選出の方法はよい少数決でなければならないと主張する。
この本の中で、全体の主張というよりいくつかの例示で興味深いものがいくつかあった。一つはファーストリテイリングの柳井社長と若い部下との会話。会議で甘い意見であっても積極的に主張すべきかどうかとの問いに、25歳にもなって給料を貰っているのに甘い意見など主張するのは先輩や上司に失礼だ、猛烈に勉強しろと叱咤したとの逸話。これはいい、と思った。自分もいくつか猛烈に勉強しないといけないことがあるが、これは現代の若者には当てはまるところが多い。でも、面と向かってこういうことが言える上司というのは中々格好良いではないか。
もう一つは2−8のパレートの法則の延長で経営コンサルタントが主張している2−6−2の法則。優秀な2割と追従者の6割、質の悪い2割というのがあるらしい。先ほどの少数決もこの優秀な2割でやらないといけないらしい。下手すると質の悪い2割で決定してしまい目も当てられないことになるという。
それから、「多数のひとに好評な人は善なる人」ではないという話。360度評価などで評価をしていくと、自分の評価をする人の目を気にしてよい人ぶってしまう。大学などでも学生による評価に強烈なことを書かれると怒ったり、やる気をなくしたりするが、一つの主張をすれば賛意を表明する人もいるし、反対意見を言う人も出てくる。すべての人に賛同される方がおかしい。
まとめてみると、リーダーたるもの明確な主張を持つ自分で責任をとるべきで、多数派にこびるべきではない。少数の優秀なメンバーを十分活用すべし、ということなのか。