日本の社会戦略

京セラ名誉会長の稲盛和夫堺屋太一の対談。貿易の伴う製造業はコスト管理がなされているが、それ以外は島国だということでコスト管理がなされていないという指摘。ほう、と思った。トヨタ式のムリムダムラが必ずしも万能ではないかもしれないが、コスト管理の面では徹底している。一つの成果を挙げるために、無限のコストを払ってもという状況では、そろそろ限界のようだ。物財と知価という対比も堺屋氏ならではか。レーガノミックス金本位制を無視し、インフレさえ起こさなければ財政、貿易赤字もよしとしたというのはよく理解していなかったが、それと似たようなことが蒙古であったという。日経に「世界を作った男」としてチンギスハンの生涯を堺屋氏が連載していたが、それが今の米国に酷似しているというのは興味深い。
 稲盛氏は随所に西郷南洲遺訓からの引用があり、西郷を敬愛する私としては、稲盛氏自体に興味を持った。この人の書いた物はあまり読んでこなかったが、今度、手に取ってみよう。学者が科学的であるがゆえに、人生観、宗教観というものを除外して考えているということを書かれていたが、確かにそういう傾向があるかもしれない。医学などは確かに科学的な面もあるが、人間を相手にせざるを得ないので、アートなどといって人間性の必要性は時々言われるが(実際に、内科学の教科書の一つが「平静の心」というウイリアム・オスラーという超人医師、今で言うと日野原重明か、の書いたアートの本だった。)、果たして、身についているかどうか。時々、当直先で、臨終を告げるときに、人生経験の足りなさを感じる。