近代衛生学の父ペッテンコーフェル

植木絢子先生の翻訳によるペッテンコーフェルの伝記が「知られざる科学者ペッテンコーフェル環境医学の創始者」として上梓された。[rakuten:book:12007486:detail]本国ドイツではかなり注目された本だったようだ。
 コッホとのコレラ菌対決で有名な人物だが、旧態依然とした考え方のペッテンコッヘルと新しい細菌学の研究者としてのコッホという対比が一般的で、コッホの引き立て役という感が強い。しかし、ペッテンコッヘル自身、環境因子を疾病の原因と考えた衛生学の創始者であり、東京帝国大学医学部の初代衛生学教授の緒方正規もこの門下生であった。
 日本の大学の医学部にはドイツ医学の流れを受けた衛生学とアメリカ医学の流れを受けた公衆衛生学とが独立してあるが、扱う分野は非常に広く、アメリカでは公衆衛生大学院という独立した学校で教えていることが殆どである。尤も、米国の医師国家試験にも公衆衛生の問題は必須項目としてでてくる。わが国の衛生学公衆衛生学の区分けは明確ではないが、環境医学、疫学、医療政策といったものが独特の手法として存在していて、それらを組み合わせて研究が行われている。福井大学のように教室が一つしかない場合はなかなか大変で、我々の専門は主に産業医学という環境医学の仲間なのだが、医療行政の支援についてのニーズが地方自治体からあってなかなかに忙しい。