予防医学はの間口の広さは特殊か?

今日は教室研究会で研究生の発表。運動関係の人が何人かいるので、運動生理に関する発表が時々あるが、この分野での常識を私たちがどれだけ知っているのかと疑問に思うこともある。幸い、運動生理関係の助手の先生がいるので、まだマシかもしれない。予防医学分野は間口が広いが、背景の分野の常識を抑えておいての応用科学であるべきなので、専門家と専門家を連れてきて、応用できる方法を考えるというような研究も必要になる。昔は、なんでも自分でやれないといけないのかと思っていたが、近頃は自分の得意でないものはその道の専門家に頼めばいいし、教えてもらえばよいと思うようになってきた。そのためには、自分も何かを教えてあげられる役に立つ人間になっていなくてはならないのだろうけれど。
 こういうことをいうとそんなに予防医学が特殊なのかということになるが、それは内科や外科といった臨床医学の各分野でも似たところ(アナロジー)があると思う。内科のすべての分野の専門家ではなくても、すべての分野の患者をとりあえず診なくてはならないのが内科医だし、外科医も緊急手術ならば、対応できるものは対応しなくてはならないだろう。
 衛生学・公衆衛生学の専門家も予防医学のテーマでの協力依頼が社会からあれば、対応せざるを得ない。その時に、最低限あるべき知識、考え方は何かというと、疫学であり、環境因子と疾病(健康事象)との関係を人間集団の中で検討しようと言う姿勢だろう。当然、専門分野を突き詰めていけば、環境因子と疾病との間のメカニズムまで検討したいし、そこには遺伝子との関係も見出されるかもしれない。それらを衛生・公衆衛生学的研究の方法論として否定する必要も無い。
 しかし、臨床研究が動物実験で終わってはならないように、基礎的研究成果を人間集団にフィードバックできないようでは、衛生・公衆衛生ともいえないのだろうと思う。