疫学講義終了

本日で疫学の講義終了。臨床疫学について検査の精度すなわち感度・特異度と事前確率、事後確率との関係を中心に講義。ネタ本はFletcherのClinical Epidemiology。名医となるためには検査を乱発するのではなく、地域の有病率等の情報や理学所見などで事前確率を十分に上げた上で適切な、すなわち尤度比の高い検査をすることが重要であることを強調したつもり。もちろん、簡単なことではないけれど…
 検査の判定に当たっては、Gold standardと考えられている病理診断でさえ判定者間一致が十分でないケースもあることを説明したが、十分な説明時間が無かったかもしれない。われわれがじん肺読影などの実験をやっていると判定者間一致度が問題になるが、これを一定以上に維持することはなかなかに難しい。経験が十分でない場合には、判定者内一致度さえも十分でないケースもある。
 それから、臨床疫学に基づくEBMは個々の臨床例に対応する際に、人間を対象とした研究を吟味した上で様々な予測に用いるという点で大きな利点があるが、すべての医療行為について根拠があるわけでもないことも強調した。最先端の分野では少数経験ある医師が症例を蓄積して行っている途上ということもありうる。私個人としてはそのような専門家の意見はエビデンスレベルが低いので参考にしてはならないとは思わない。むしろ、エビデンスが構築されようとしている途上である。すべての平均的な医師に参考になることではないにしろ、新たな局面を開こうとする者たちにとっては既に固まったエビデンスより、トップレベルの専門家との討論のほうが役に立つようにも思える。