農業労働の労働衛生OR産業保健

農業国においては農業労働は労働人口のかなりが関わっていることになり、そこでの健康問題は労働人口全体への労働損失につながる。ひいては、国家のGDPにも関わってくることになる。ところがこの農業労働についてはあまり専門家としてやっているひとが多くない。福井県も農業県であり水稲栽培のほかにも越前水仙など特徴のある産物があるが、これに関わる労働衛生の研究は十分になされていない。現在、首都大学東京の瀬尾明彦教授が福井におられたころ越前水仙の栽培に関してたしか県の農業普及員の方から人間工学的な改善の助言を求められたことがあったが、水仙は大変な急斜面での栽培を要するにもかかわらず労働人口の高齢化が進んでおり、改善すべき点が多くあることを指摘されていた。
 別の農業普及員の方に技術移転のやり方を伺ったが、永くこだわりのある農法を持っている農家の方の考え方を変えるのは至難の業らしい。地区毎では現場の人の意見を吸い上げられないので集落ごとの対話を重ねて意見を集約していくという地道な作業を続けるらしい。私も健康日本21という健康増進計画の福井市版を作成したときは、策定委員の意見集約をする際、住民参加型にできるだけ近づけようと苦労したつもりだったが、こういう集落ごとの活動というところまではできなかった。健康増進という個々でかなり意識の異なるものと、生活の糧となるものの生産とでは目的意識が異なるだろうが、漠然とした住民参加よりは目的意識がはっきりした集団での健康増進に関する介入のほうが伝わりやすい気がする。