Cumulative incidence (incidence proportion) & incidence rate

疾病や死亡の新規発生を知るには、特定された集団を一定期間観察するコホート研究(cohort study)を使わなければいけない。しかし、実際には対象に決めた集団のすべてを追跡しきることは非常に難しく莫大な費用と人材が必要になる。対象とした集団で死亡が起こることを観察しようとしているのだが、対象集団の中には引越ししていなくなってしまう人もでてくるし、引越しでなくても消えてしまう人もいる(これらの人のことを転出したという)。これを把握して、個々の対象者を何年追いかけて、結果として何人を何年追いかけたということを人年(person-year)という単位で表すことができる研究が真のコホート研究となり、死亡率(mortality rate)が計算できることになる。outcomeが死亡でなく疾患であれば、それが罹患率(incidence rate)となるわけだ。
 ところが、現実には対象とする集団の対象に設定したときの名簿はあるんだけど、その中の数名は音信不通になっている。死亡状況はすべてに連絡して生きていることを確認したのではなく、総務省に人口動態統計のデータの目的外使用を申請して調査したということだってあるわけで、その場合は、新規に死んだ人の数は分かっているのだが、始めの名簿の人で音信不通になった人が実際生きているのか死んでいるのかは分からないということになる。出入りの激しい地域ではこの結果得られた累積死亡率(cumulative mortality)は実は信頼できない数値だということもありうる。
 面倒くさいけど、病気の原因と病気との因果関係を証明しようとすると、要因のほうが先にあって新たに病気になったという状況じゃないと証明したことにならない(時間的関係:temporal relationship)。だから、コホートじゃないといけない。これを使わないと相対危険(relative risk)や寄与危険(attributable risk)は計算できないのだ。
 こういう手間隙かけないで、因果関係を証明しようとするのが、患者対照研究(case-control study)ということになり、相対危険を計算できないので、オッズ比(odds ratio)で近似する。この方法ではtemporal relationshipが証明できない可能性があるし、疾病の罹患率の比較はできない。